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「住む国やキャリア、生き方を自由に選べる大人に育つ」子育ての仕方

子供をインターナショナルスクールに通わせるメリット、費用とリスク

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親が子供をインターナショナルスクールに通わせたいと思う理由は「国際的に活躍する大人になってほしい」に尽きると思います。でもインターは学費が極めて高いことでも有名ですし、日本の標準教育も国際社会に対応すべく変化している最中です。

インターに通わせるか判断するには、インター教育のメリット、インター教育に伴うリスク、そして圧倒的に費用が下回る日本の今の標準教育と費用対効果の面で比べることが大事です。 

インターナショナルスクールの卒業生はこうなる

幼稚園からインターナショナルスクールに通わせ、そのまま海外の大学に行かせるスタンダードなインター教育をさせようとすると、学費や諸々の費用込みでざっと5000〜6000万円かかります。

子供の未来への巨額な投資ですから、費用対効果をしっかり知っておきたいですよね。そこで、私が個人的に知るインター時代の同級生・上級生・下級生の職業や年収、ライフスタイルを元に、インターに通う子供の大学卒業後の姿をプロファイリングしました。

標準的なインター教育を何事も問題なく経ていくと、みなさんのお子さんはこうなる確率が高いです:

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  • 英語・日本語のバイリンガル。ただし英語に比べ日本語は少し苦手。
  • 自分が日本人であるという意識が薄い。日本的な組織には馴染めない。
  • 自分に自信があり、どの人種の人とも対等に接する。
  • 仕事がデキるので、男性は早めに結婚し、女性は婚期が遅れ気味、
  • 大学卒業後は帰国し、外資系金融会社に就職。初任給50万円。
  • 起業はせず、グローバル起業でキャリアを積む傾向。

インターナショナルスクール卒業生がこのような人物になる傾向にある理由については、こちらの記事(準備中)をご参照ください。

 

インターナショナルスクールとは

子供をバイリンガルにしたいからインターナショナルスクールに通わせたいと話す親御さんをたまに見かけますが、子供の英語をペラペラにするのがインター教育の目的ではありません。

簡単に言えば、世界のどこにいても活躍できるグローバル市民に育てるのがインター教育の目的です。もちろん、(日本語やフランス語などの授業以外)授業は全て英語で行われるため、結果的に英語がネイティブ並みに流暢になるのは事実です。

しかしインターに通った結果「英語が話せるようになっただけ」の子供はインターに行った意味がなかったと言えるでしょう。残念ながら、学校で特筆すべき成果を一つもあげられなかった子供がこの部類に入ります。

 

インターナショナルスクールの教育

「日本語と英語のバイリンガルになれたら最高じゃない」と思われるかもしれませんが、今の世の中、バイリンガルは世界に掃いて捨てるほどいます。もっと言えば、中国語、英語とさらに第三言語(たとえば日本語)を話す中国人トライリンガルは大勢いますし、アラビア語、英語と第三言語(たとえば日本語)を話す中東系のトライリンガルも増えています。

世界のどこでも活躍できるようになるために言語習得以上に大事なのは、様々な人種の人と協働し、競い合う経験です。異なる考え方を持ち、異なる生き方をする人たちと一緒に育つことで、彼らを自分と同じ人間として対等に捉えられるようになるのがインター教育の最大の利点です。

インターの高校では、日本の高校のように国内大学の入試は一切意識せず、主に海外の3年ないし4年制の大学に進学する前提で教育を受けます。また、海外の有名大学入学に必要不可欠な課外活動にも力を入れます。

実際に、日本のインター校からハーバード大やブラウン大、プリンストン大などのアイビー・リーグ - Wikipedia (アメリカ北東部の名門私立大学8校の総称) への進学者が毎年数十名輩出されます。インター卒業生の8割以上がアメリカやカナダ、イギリスの大学に進学し、その後現地で就職するか、帰国して外資系企業で世界的に活躍します。

インターでがんばる子供は、自分の出身地や国籍、地理や思想に縛られることなく自由に職や生き方を選べる人間に育つ傾向にあります。

しかし裏を返せば、最低限バイリンガルな大人に育つのもインター教育の特徴ではあります。

 

インターの学費とそのほかの費用

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インターナショナルスクールの学費は、学校によって異なる仕組みで決定されています:

  • 学年が上がるにつれて学費が高くなる方式
  • どの学年も学費を一律にする方式

全ての学校と学年の学費を平均すると、相場は210万円/年 (2019年現在) になります。これに遠足や制服代など諸々の費用が足され、年間の子供の教育費は約250万円になります。

さらにアメリカの大学に進学する学生が多いので、インターを卒業した後は年間400〜500万円を4年間、学費に費やす可能性が高くなります。海外の大学では寮に入り、毎年1〜2回日本に帰国することになるので、生活費を含めると少なく見積もって年間500万円近くかかります。 

つまり、たとえば4歳から18歳までインターに通わせ、アメリカに4年間留学すると学費の合計は、約5500万円になります。

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優良なインターナショナルスクールの見分け方

インター校同士の教育内容に(最近はプログラミング関係の授業を取り入れているか以外に)大差はありません。全てのインター校が英語で授業を行い、日本の学校の標準的な教育に比べて自己表現やマルチな才能開花により力を入れています。では、優良なインターナショナルスクールの定義とは何でしょう?

優良なインターナショナルスクールを見分けるには、以下の2点を確認します。

  • 大前提として、高校教育を提供しているか
  • 熟練の進路カウンセラーを雇用しているか

高校がないインターナショナルスクールに通う学生は、必ず転校しなければなりません。インターナショナルスクールからの転校は、色々な意味で簡単ではありません(理由は「インターに通わせるリスク」にて詳しく後述します)。

私が卒業したセント・メリーズ・インターナショナルスクールでは、幼稚園から高校卒業までの教育を提供していますが、それに加え、世界中の学校から引っ張りだこのカウンセラー(現在は北京のインターナショナルスクールの進路カウンセラーを最後に務めた後、引退しています)が常駐しており、多くの学生が自分たちにぴったりの海外の大学に進学していました。

アメリカやイギリスの大学情報に精通しているカウンセラーがインターの学生に個別に助言できる体制を整えているからこそ、毎年世界のトップ大学への進学を実現できていると言っても過言ではありません。

 

インターに通わせるリスク

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インター教育にはハイリスクハイリターンの側面があります。リスクの要因は大きくわけて3つあり、子供の入学を考える際にはこれらを考慮する必要があります。

リスク1. 学費が途中で払えなくなるリスク

前述の通り、インター教育には毎年莫大な学費がかかります。医者や会社の役員といった職に就く親を持つ場合は心配が減りますが、自営業を営む家庭の場合は、およそ18年間、毎年250〜400万円の学費を払い続ける自信と覚悟が必要です。途中で事業の経営が傾くと、最悪の場合、インターを中退せざるを得なくなります。

その場合は日本の標準的な学校に編入すれば良いと思われるかもしれませんが、「インターに通う子供は日本の学校教育を受けない」ということに留意しなければなりません。漢字は同年代の日本人の子供ほど読めませんし、理科や数学、歴史などあらゆる教科を日本語で学んでいないため、ほとんど異国の学校に転校するようなものです。

「円錐形」「清少納言」「でんぷん」など、教科書や授業で見聞きする単語のほとんどが何を指すのかわからないのです。学業で良い成果を出すのは、「言語の壁」という残念な理由で難しくなってしまいます。

このことに加え、中学生以降に日本の学校編入しようとすると、さらに困難が待ち受けます。インターの中学校を卒業しても日本の学校教育法に則った中学校を卒業したことにならないため、原則公立校を受験することはできません。私立の学校からのみ、受け入れ体制のある転校先を探すことになります。

リスク2. 転校のリスク

インターナショナルスクールは年々増え続けていますが、幼稚園から高校までの一貫教育を提供する学校はまだあまり多くありません。なぜ高校卒業までの教育を提供するインターが重要なのかと言うと、高校まであるインターに通わせなければ大学に進学できず、結局途中で転校することになるからです。

以下に高校まであるインターをまとめました。

高校までの一貫教育を提供するインターナショナルスクール
The American School in Japan 東京は調布市に位置する、1902年開校のアメリカンスクール。共学。
St. Mary's International School 東京は世田谷区に位置する、1954年開校のインターナショナルスクール。男子校。
Seisen International School 東京は世田谷区に位置する、1949年開校のインターナショナルスクール。プリスクール以外は女子校。
International School of Sacered Heart 東京は渋谷区に位置する、1908年開校のインターナショナルスクール。プリスクール以外は女子校。
Aoba-Japan International School 東京は練馬区をはじめとする数カ所にキャンパスを有する、1976年開校のインターナショナルスクール。共学。2014年にBusiness Breakthrough社に買収され高校教育を提供し始めた。
Canadian International School Tokyo 東京は品川区に位置する、2000年開校のインターナショナルスクール。共学。
K International School Tokyo 東京は江東区に位置する、1997年開校のインターナショナルスクール。共学。
Yokohama International School 横浜は中区に位置する、1924年開校のインターナショナルスクール。共学。
Horizon Japan International School 横浜は神奈川区に位置する、2003年開校のインターナショナルスクール。共学。
Saint Maur International School 横浜は中区に位置する、1872年開校の日本最古のインターナショナルスクール。共学。
Tsukuba International School 茨城はつくばに位置する、1992年開校のインターナショナルスクール。共学。
UWC ISAK Japan 長野は軽井沢に位置する、2014年開校の全寮制インターナショナルスクール。共学。
Nagoya International School 名古屋は守山区に位置する、1964年開校のインターナショナルスクール。共学。
Canadian Academy 神戸は東灘区に位置する、1913年開校のインターナショナルスクール。共学。
Hiroshima International School 広島は安佐北区に位置する、1962年開校のインターナショナルスクール。共学。
Fukuoka International School 福岡は早良区に位置する、1972年開校のインターナショナルスクール。共学。
Hokkaido International School 札幌は豊平区に位置する、1958年開校のインターナショナルスクール。共学。

もし幼稚園や小学校、中学校までしかないインターに子供を入れた場合は、遅くても高校入学の段階で上記の学校のいずれかへの編入を目指すことになります。

幼稚園しかないインターナショナルスクールはたくさんあるので入学させやすい反面、結局数年後に別のインター探しに苦労することになります。子供の苦労も考えると、できる限り幼い年齢から上記インターへの入学を試みることを強くお勧めします。

リスク3. 退学のリスク

インターナショナルスクール は学生の親から高い学費を払ってもらっている私立校がほとんどですから、他の学生に著しく悪影響を及ぼす学生(タバコや万引き、いじめなど)に日本の学校ほど寛容ではありません。たとえ卒業まであと一年という歳になっても、目に余る態度を取り続けていると容赦無く退学させられます。

特に高校に入ると、学校の目は厳しくなります。私が高校4年生の頃には、一般的に「問題児」と認識されるようなクラスメイトは一掃されていました。

まじめな学生が学業に集中できるように学校が環境を整えてくれるのはもちろん素晴らしいことですが、「もし自分の子供が問題を起こすような青年に育ってしまったら」を考えると、リスクとも言えます。

高校生の時にインターを退学させられてしまうと、日本の学校への編入は絶望的です。高校中退のままか、通信教育を受けさせることになるでしょう。

他のインターへの転校も困難が予想されます。なぜなら、インターナショナルスクールのコミュニティーは狭く、密接です。これは憶測でしかありませんが、全国のインターコミュニティーの中でブラックリストに載せられてしまうということも、容易に想像できます。

 

また、退学とは関係ありませんが、日本の教育システムと違ってインターでは小学校から「留年」が起こり得ます。授業についていけない学生は、たとえ6歳でも留年を言い渡されます。子供も大人も学ぶペースは人それぞれですが、日本の教育では個が全体に合わせるのに対し、インター教育では無理に個を全体に合わさせようとはしません。学習に時間をかける必要があるなら、時間をかけさせてあげるべき、と考えます。

インターに通わせようと思ったら、日本の標準的な教育とは仕組みからして良くも悪くも大きく異なる、ということを念頭に置いておくべきだと、私は思います。

 

インターに通わせないという選択

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英語力はもちろんのこと、国際感覚や自己表現、自己主張する力が身につき、大学は海外に留学し、世界中どこでも働けるようになるのがインター教育の特徴ですが、学費の観点からはハイリスク・ハイリターンであることもまた事実です。

私自身、インターナショナルスクールに12年間通って結果的によかった、と思うと同時に、社会に出て、日本で子供と大人の教育に携わる仕事を何年も続け、様々な分野で活躍する方に出会ってみて思うのは、優れた教育環境はインターだけではないということです。

日本で生まれ、日本に住み日本のために尽くす人間に育てることを目的にするのではなく、日本人としてのアイデンティティーを持ったグローバル市民に育てることを目指す教育が、少しずつ日本の各地で花開いています。

世界の中での日本の将来に危機感を抱いている公立・私立学校の教職員の方たちを中心に、英語で授業を行ったり、従来の日本にはなかった欧米式の教育手法の良いところを取り入れつつ、日本にしかない教育を模索する動きがなされています。

世界中の人たちが協働するこれからの世の中では、みんなが共通言語として英語を使い、みんながグローバルなビジネス作法に則って共通の課題に挑みます。このような環境では、ただ英語を話せたり自己表現が上手だったりするだけではなく、日本の文化や考え方といった「個性」を持ち寄れなくては「多様性」という価値を提供できません。

 

インター教育の弱点は、日本人としてのアイデンティティーを身につけさせにくいことです。インター教育は子供をほぼ確実にグローバル市民に育て上げますが、私は、これからの世の中では「グローバル市民 + アルファ」であることを求められてくる気がしてなりません。日本の標準的な学校を卒業させるだけでは身につかないものがあるのと同様に、インターを卒業させるだけでは身につかないものがあります。

インターに子供を通わせる経済力があるなら、インターを強くお勧めしますし、私が何か力になれることがあれば力になりたいと思います。でも経済的な理由などでインターに通わせられなかったとしても、残念に思うことはないとも思います。これからの世界で活躍するために必要な素養が身につけられる方法は他にたくさんあるのですから。

 

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